相対樹の知性の領域は、知識の量および思考能力を容易に尺度できるので、幼稚園から大学までの入学試験や卒業してからの入社試験として常に衆人の関心事となっており、学校教育においても家庭教育においても熱心にこの領域の研鑽がなされています。
 戦後の偏差値教育はまさにその典型でしょう。
 これに対して絶対樹の感性の領域は、武道や技芸道あるいは各宗教が並べられていますが、まずもってそのレベルを一般的に尺度することは容易ではないこと、これらは一般社会においては特殊な人達のやっていること、すなわち趣味の領域であり、一般的に入学試験にも入社試験にも適用できるものではないために、感性を高めることが社会全般に関心事になり得ない実情があります。

特に知性を司る相対樹と比べ、一般社会的にはマイナーな関心事にとどまっています。のちに詳しくのべますが、最近の脳科学では、知を司っているのは頭頂葉で、ここが人間のデジタルコンプーターであり、それに対して感性、人格を司るのは前頭葉であると、アメリカの脳科学者が実験で実証したレポートが発表されています。

それを参考にこの絵(図1)を作成しました。人間形成というのは、当然、慧のほうを充実することですが、それは、特に戦後の教育行政において、一一向にできていないのが現実です。相対樹は目に見えるし、入学試験にしても入社試験においても、相対的に点数で測れますから、「とりあえずこちらでもって」という判断尺度として広く社会で問われ、育成されてもいます。

絶対樹のほうは客観的に尺度しにくいので、そうはいきませんが、しかし、実際に実業で役に立つかたたないか、本当にクリエィティブな仕事ができるかできないか、などといったことは絶対樹の要素が非常に大きいのです。

丸川雄浄・葆光庵丸川春潭「人づくり肚づくりと禅-第1章「相対樹と絶対樹」から「人づくり・肚づくり」を読み解く」より) 


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